ネットワーク

仕事場のWi-Fi環境を改善する手順

Wi-Fiが遅い・会議が途切れるときは、買い替える前に回線・ルーター・電波・端末の順で切り分けます。設置場所の変更だけで終わることもあり、機器を足すかどうかはその後で決まります。切り分けの手順と、中継機・メッシュ・有線化の選び分けをまとめました。

PUB UPD CAT ネットワーク READ 約9分

SCOPE

対象
Web会議が途切れる、通信が遅いなどの問題を抱える在宅ワーカー・小規模オフィス
到達点
原因を切り分け、機器を買う前にできる対処から順に実行できる状態
当サイトはアフィリエイト広告を利用しています。 広告掲載ポリシー

画面共有を始めた途端に相手の声が途切れ、「いま止まりましたか」と確認し合う時間が生まれます。カメラを切ると戻ることもあれば、何もしないまま回復することもあります。会議のあとで速度測定サイトを開くと、数字はとくに悪くありません。

やっかいなのは、症状が出ている最中の状態が残らない点です。落ち着いてから測っても正常な値しか出ないため、原因が分からないまま次の会議を迎えます。そして手を打つときに最初に候補へ上がるのがルーターの買い替えで、直らなければ原因不明のまま機器だけが増えます。

順番を変えます。回線、ルーター、電波、端末の4か所を上から切り分け、買い替えは最後に置きます。ここで挙げる対処の多くは費用がかからず、置き場所と設定を変えるだけで終わることもあります。

症状を再現できる形にするまで機器を買わない

最初にやるのは記録です。症状が出るたびに、次の4つを1行で残します。

  • 日時と、そのとき何をしていたか(会議中/大きいファイルの送信中/何もしていない)
  • 遅かった端末と、その置き場所
  • 同じ時間に誰が何を使っていたか
  • 症状の種類(速度が落ちた/完全に切れた/一瞬止まって戻った)

3回か4回たまると、症状に型があることが見えてきます。全端末で同時に起きるのか1台だけか。特定の部屋だけか、どこでも起きるか。時間帯が偏っているか。この3つの答えで疑う場所が絞れます。

速度測定は、症状が出ている最中に測る場合だけ判断材料になります。見るのは下りの最大速度ではなく、上り側の値と応答時間のばらつきです。会議の音声や画面共有は上り方向の細い帯域を安定して使い続ける通信なので、下りが速くても上りが揺れていれば途切れます。

症状の出方 最初に疑う場所 まずやること
どの端末でも同じ時刻に遅い 回線側(契約回線または建物の共用設備) 有線の端末でも同じ症状が出るか確認する
有線は問題なく、無線の端末だけ遅い ルーターの無線部と電波環境 周波数帯と置き場所を確認する
特定の部屋・席だけ切れる 電波の届き方 置き場所を変える、帯域を使い分ける
1台だけ遅く、隣の端末は問題ない 端末側の設定・無線子機 省電力設定を見る、別端末と比べる
平日の夜など時間帯が偏る 回線の混雑 時間帯別に記録し、接続方式を確認する

回線側か宅内かは、有線でつないで確かめる

最初の分岐は「回線側か、宅内の無線か」です。判定は単純で、ルーターのLANポートにPCを直接つなぎ、そのPCの無線をオフにして測ります。

有線にすると症状が消えるなら、原因は宅内の無線側です。有線でも同じように遅いなら無線は関係なく、回線そのもの、回線終端装置、ルーター本体の処理能力を疑います。

回線側が疑わしいときは、提供元の障害・工事情報が先です。次に建物の条件で、集合住宅では配線方式や共用部分の混み具合により、同じ契約でも出方が変わります。夜間に集中して遅くなる場合は接続方式が影響していることがあるため、提供元が別の方式に対応しているかを確認します。方式の名称や対応可否は契約と地域で異なるので、提供元の案内で確かめてください。

再起動には順番があります。回線終端装置の電源を抜き、少し置いてから入れ直し、ランプが安定してからルーターの電源を入れます。同時に抜き差しすると、ルーターが回線を認識し直せないことがあります。再起動で直った場合も記録に残し、数日おきに再発するなら機器側の不調を疑います。

置き場所を変えるだけで直ることがある

宅内の無線が原因だと分かったら、最初に触るのは設定ではなく置き場所です。費用がかからず、効果がその場で分かります。

電波は水分と金属で減衰します。ルーターが次のような場所にあるなら、それだけで届き方が変わります。

  • 床に直置き、または金属製のラックの中
  • テレビや電子レンジなど大型家電の裏や真横
  • 水槽や観葉植物の陰、厚い壁や金属ドアを挟んだ位置
  • 部屋の隅で、使う席との間に扉が2枚以上ある

改善の方向は「高く、部屋の中心に近く、周囲に金属を置かない」です。ただし一度に全部変えず、1か所変えたら同じ席・同じ端末で測り直します。まとめて変えると何が効いたのか分からなくなります。

回線の引込口が玄関や納戸にあり、ルーターを動かせない構成も珍しくありません。この場合はルーターをその場所に残し、仕事をする部屋まで有線を1本引いて、そこで電波を出す形にします。線を増やすと机の周りは煩雑になるので、経路は配線を増やさない構成の作り方を見てから決めると手戻りが減ります。

電波の混雑は帯域とチャンネルの調整で減らせる

無線は、同じ空間の機器が順番に電波を出す仕組みです。使う機器が増えれば1台あたりの待ち時間が伸びるため、速度が落ちるというより「詰まる」形で症状が出ます。

周波数帯は2.4GHz帯と5GHz帯で性質が違います。2.4GHz帯は障害物に強く遠くまで届きますが、電子レンジやBluetooth機器と干渉しやすく、近隣の機器とも同じ範囲を取り合います。5GHz帯は干渉が少なく速度も出やすい一方、壁や床で弱まります。電子レンジを使うと切れるという記録があれば、原因はほぼ2.4GHz帯の干渉です。業務で使う端末は5GHz帯に固定し、2.4GHz帯はプリンタやスマート機器など切れても困らない機器に回します。スマート機器の多くは2.4GHz帯にしか対応していないため、この分担は自然に成立します。

チャンネルも見ます。近隣のアクセスポイントが多い場所では、自動選択に任せていると混んだチャンネルに居座ることがあり、管理画面から空いているほうへ固定すると安定する場合があります。もう1つ、5GHz帯の一部のチャンネルは気象レーダーなどと周波数を共用しており、レーダーの電波を検出したら通信を止めて別のチャンネルへ移る動作が規格で決まっています。会議中に数分間まったくつながらず、その後何もせず復帰したという症状なら、共用しない範囲へ固定して再発するか見てください。

接続台数も見直します。使っていないのにつながったままの機器は切るか、業務用と生活用でSSIDを分けます。

1台だけ遅いときは端末側を疑う

同じ部屋の別端末は問題ないのに、特定の1台だけが遅い。この場合はルーターをいくら触っても直りません。よくある原因は次の4つです。

  • 省電力設定:バッテリー節約の設定や無線アダプタの省電力機能が働くと、電波の受信を意図的に絞ります。電源につないだときと外したときで症状が変わるなら、ここを疑います。
  • 無線子機やドライバが古い:本体は新しくても、無線部分だけが古い規格に留まっている機種があります。
  • 常時動いている通信:クラウド同期やバックアップが会議と重なると、上り帯域を持っていかれます。会議中は止める運用にします。
  • VPN経由で全通信を通す設定:通信がいったん社内を経由する構成では、宅内を整えても遅延は残ります。環境ではなく構成の問題です。

通信ではなく処理が追いついていない場合もあります。仮想背景やノイズ抑制はPCに負荷をかけるため、映像のカクつきが通信のせいとは限りません。会議アプリの映像だけが崩れ、同時のファイル転送は問題なく進むなら、端末の処理側を先に見ます。音声だけが相手に聞き取りにくい場合はマイクの位置や部屋の反響が原因のこともあり、その切り分けはWeb会議用イヤホンの選び方で扱っています。

中継機・メッシュ・有線化はどれを選ぶか

置き場所と設定を調整しても届かない範囲が残るなら、機器を足す判断へ入ります。選択肢は3つで、性質がはっきり違います。

中継機を足す メッシュ機器に置き換える 有線を引いて電波を出す
届かない場所の埋め方 親機の電波が十分届く位置に置き、そこから先へ中継する 複数台を配置して面で覆う 届かない部屋まで線を引き、その場所で電波を出す
速度の落ち方 親機との通信と端末との通信を同じ無線で兼ねる構成では落ちやすい 機器間の通信を別の無線や有線で持てる構成なら落ちにくい ほとんど落ちない
移動したときの動作 別のネットワーク扱いになり、手動の切り替えが要ることがある 同一のネットワークとして扱われ、移動しても切り替わる 親機と同じ名前にすればメッシュに近い動作
導入と管理の手間 挿すだけだが置く位置に試行錯誤が要る。台数が増えると設定が分散する 設置と初期設定は台数分。管理画面は1つにまとまる 経路の検討と敷設が要る。構成は単純なまま
向いている状況 届かない部屋が1つで、用途が資料閲覧程度 部屋数が多い、移動しながら使う 会議や大きなファイルを扱う席が固定されている

中継機で失敗する典型は、電波が届かない場所に中継機を置くことです。受け取った電波を先へ渡す装置なので、受け取る電波が弱ければ弱いまま延長されます。親機と使う席の中間で、親機の電波が安定して届く位置に置きます。

編集部としては、仕事をする席が決まっているなら、機器を足す前にその席まで有線を1本引けないか検討することを勧めます。業務用の端末を1台だけ無線から外せば、残りの端末の混雑も減ります。

買い替えを検討してよい条件

ここまでやって改善しないときに、初めて買い替えが選択肢になります。直る見込みがあるのは次の状態です。

  • 有線では問題ないのに、どの部屋・どの端末でも無線だけが遅い
  • 接続台数が増えたときだけ極端に遅くなる(処理が追いつかない)
  • 端末側は新しい規格に対応しているのに、ルーターだけが古い世代のまま
  • 数時間動かすと不安定になり、電源を入れ直すと戻る(発熱や経年劣化)
  • 提供元のファームウェア更新が終了している(安定性だけでなく安全面からも入れ替え対象)

原因が回線側・間取り・端末の設定にあった場合は、ルーターを替えても症状は残ります。切り分けを飛ばして買うと、この見分けができません。

買う前に決めるのは、置き場所(決まらないと必要な台数も決まりません)、有線ポートの必要数、複数人で使う場合に誰が管理するかの3つです。管理画面のパスワードを知っている人が1人しかいない状態は、その人がいないときに詰みます。人が出入りする事務所での運用設計は小規模オフィスにIoT機器を入れるときの進め方でも扱っています。

なお、回線事業者から借りている機器に無線機能が含まれている場合、自前のルーターを足すとルーターが二重に並び、それ自体が不調の原因になります。どちらか一方をブリッジとして動かすか、貸与機器の無線機能を止めてください。何を先に買うかで迷う場合は、仕事道具にお金をかける優先順位の考え方が使えます。

次にやること

今日から順に手をつけるなら、この並びです。1日に1つだけ変えて、そのたびに同じ席・同じ端末で測ります。

  1. 症状が出たときの記録を3回分ためる
  2. 有線でつないで、回線側か宅内かを判定する
  3. ルーターの置き場所を1か所だけ変えて、変化を見る
  4. 業務用の端末を5GHz帯に寄せ、混んでいればチャンネルを固定する
  5. 使っていない機器の接続を切る
  6. まだ届かない範囲が残るなら、中継機・メッシュ・有線化を比べて足す
  7. それでも改善しないときに、買い替えの条件に当てはまるかを確認する

よくある詰まりどころ

会社支給の端末で設定を変えられない

省電力設定も無線の設定も触れないことがあります。自分でできるのは電波環境の改善までです。記録を取って情報システム部門に渡すと、端末側の設定変更や別の接続方法を案内してもらえることがあります。

中継機を買ったが体感が変わらなかった

置く位置が悪いか、原因が電波ではなかったかのどちらかです。中継機を外して有線でつないでも症状が出るなら、原因は回線側か端末側にあります。位置を変えて測り直しても改善しないなら、いったん外して切り分けをやり直します。

家族や同居人と共用していて、誰が何を使っているか把握できない

把握する必要はありません。業務用のSSIDを分け、会議で使う端末だけをそこに置きます。生活側の通信量が増えても、業務側の待ち時間が伸びにくくなります。

改善したのか分からない

体感で判断すると、直っていなくても直った気になります。着手前に「1週間で症状が何回出たか」を数えておけば、対処後の1週間と比べられます。回数が減っていなければ、原因の見当が外れています。