BUYING GUIDE

スマートオフィス機器の選び方|導入前に決めること

スマート機器の選定は、性能の比較より先に「何と連携するか・止まったときどうなるか・誰が管理するか」の3点で候補が絞れます。種類ごとの導入難度、購入前に確認する項目、最初に試す範囲の決め方までを判断軸の形で整理しています。

PUB UPD CAT 選び方ガイド READ 約9分

SCOPE

対象
スマート機器の導入を具体的に検討している小規模オフィス・在宅ワーカー
到達点
運用まで含めた判断基準を持ち、導入する機器を絞れる状態
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1台目のスマート機器は、たいてい問題なく動きます。アプリの案内に沿って進めれば、その日のうちに設定まで終わります。手が止まるのは2台目からで、「1台目と連動させられるか」「同じアプリで管理できるか」を先に確かめておかないと、買ってから使えないと分かるためです。

製品ページを見比べても、この部分は判断できません。そこに書かれているのは対応する機能と仕様で、実際に詰まるのは連携の可否、止まったときの動き、設定を持つ人が誰か、という機器の外側にある条件だからです。導入したあとに元へ戻すことになる原因も、たいていこちら側にあります。

そこで、機器を選ぶ前に決めておく条件を3つに絞ります。その3つで候補を足切りしてから、種類ごとの導入難度、購入前の確認項目、提供が終わったときのリスク、最初に試す範囲の決め方へと進みます。

製品ページを見比べても候補が絞れない理由

比較を始める前に、次の3つを決めておくと候補は形式的に減ります。

  • 連携:その機器を、ほかの何とつなぐのか。いまつなぐものと、半年後に足す予定のものを分けて書き出す
  • 代替手段:機器が動かなくなったとき、同じことを手で行えるか。行えないなら、業務は何分止まるのか
  • 管理者:アカウントと設定を持つのは誰か。その人が不在のとき、誰が触れるのか

3つとも、製品の仕様欄には書かれていないか、書かれていても条件付きです。逆に言えば、ここが決まらないまま仕様を並べても、比較軸が存在しないまま表を作っているだけになります。

順番にも意味があります。連携が成立しない機器はその時点で候補から外れ、代替手段のない機器は業務用として採用しにくく、管理者が決まらない機器は導入できても半年後には誰も触らなくなります。上から順に足切りしていくと、検討する対象はかなり少なくなります。

なお、そもそもどの操作を自動化するかが決まっていないなら、機器を選ぶ段階よりも前にいます。対象の選び方は仕事部屋を自動化するにはどこから手をつけるかで扱っています。

連携できるかは「つなぎ先」を書き出してから確かめる

「連携できます」という表現は幅が広く、少なくとも3つの意味で使われます。1つのアプリの画面に並んで表示されるだけ、条件を設定して片方の動作でもう片方を動かせる、外部のサービスや別のアプリから呼び出せる、の3つです。欲しいのが2つ目や3つ目なら、1つ目しかできない機器を選んだ時点で作り直しが確定します。

確かめる手順は、つなぎ先を先に書き出すことです。対象は機器だけではありません。

  • いま動かしたい機器(照明、電源、空調など)
  • 半年以内に足す可能性があるもの
  • 既存の設備(壁のスイッチ、手持ちのリモコン、玄関の鍵、ルーター)
  • 操作する側の入口(スマートフォン、PC、音声、壁付けのボタン)

このうち既存の設備が抜けやすく、あとから問題になります。壁スイッチで電源が切れる照明は、スイッチが切られている間は通信もできません。手持ちのリモコンをそのまま使いたいなら、置き換え型ではなく後付け型を選ぶ必要があります。

構成の型は、大きく4つに分かれます。

単体機器+メーカー純正アプリ ハブでまとめる 共通規格への対応で揃える 既存機器に後付けして操作する
機器を増やすとき メーカーが増えるほどアプリが増え、機器をまたいだ条件設定ができない 対応機器なら追加は容易。非対応の機器は同じ仕組みに入らない 混在させやすいが、対応は機能単位で欠けることがある 1台ごとに設置と設定が要り、手間が台数に比例する
通信が切れたとき 手元での操作は残ることが多いが、外出先からは何もできない ハブが落ちると配下の機器がまとめて止まる 宅内で完結する動作は残る場合がある 元の機器の手動操作はそのまま使える
管理のかたち アプリごとにアカウントが分かれ、権限管理が分散する ハブの管理者が単一障害点になる 規格が同じでも管理画面は製品ごとに分かれる 設定が後付け機器側に集まる
提供が終わったとき そのメーカーの機器だけが使えなくなる ハブが止まると全体が影響を受ける 別の管理側へ移せる余地が残りやすい 元の機器はそのまま使い続けられる

台数が3〜4台までで、機器をまたいだ連動を求めないなら、単体と純正アプリで足ります。連動させたい条件が2つ以上ある、または複数人で使うなら、最初からハブか共通規格を前提にしたほうが後戻りは少なくなります。既存の設備を残したい場合は、後付け型を軸に組むことになります。

止まったときに何が起きるかを、買う前に確認する

止まり方は3種類あり、それぞれ機器の挙動が違います。通信が切れる、電源が切れる、提供側のサービスが落ちる、の3つです。

確認したいのは「止まった瞬間、機器はどの状態で固まるのか」です。直前の状態を保持するのか、あらかじめ決められた状態に戻るのかで、意味がまったく変わります。

  • 電源まわりは、通電したままか遮断されたままかで、つないだ機器側の被害が変わります
  • 照明は、消灯のまま固まれば作業ができず、点灯のまま固まれば消せなくなります
  • 施錠は、施錠側で固まれば締め出し、解錠側で固まれば防犯上の問題になります
  • 空調は、固まった状態と季節の組み合わせで被害の大きさが変わります

この情報は仕様欄に載っていないことが多く、載っていても「ネットワーク接続が不要な操作」といった書き方で、どの停止に対応するのかまでは読み取れません。販売元へ問い合わせて確認する項目として扱ってください。

同時に、手で同じことができるかも見ます。物理的なスイッチや鍵が残る構成なら、機器が止まっても業務は続きます。残らない構成を選ぶ場合は、復旧までの時間を業務が許容できるかを先に決めておきます。

管理者を決めない導入は、人が入れ替わるときに止まる

小規模な導入でよく起きるのは、担当者が自分の個人アカウントで機器を登録し、設定がその人の端末にしか入っていない状態です。動いている間は表面化しませんが、退職、端末の買い替え、長期の不在のいずれかで止まります。設定を作り直せる人がいないため、機器はあるのに誰も触らない、という状態になります。

選定の段階で見るのは次の3点です。

  • 管理者を複数登録できるか。1つのアカウントを共有する形しか取れない場合は、共有が規約で禁じられていないかもあわせて確認します
  • 権限を分けられるか。操作だけできる人と、設定を変えられる人を分けられると、退職時の処理が軽くなります
  • 権限の取り消しが機器側だけで完結するか。物理的な鍵の回収が要るのか、アプリの操作で済むのかで、運用の手間が変わります

一人で使う場合も同じ問題が起きます。端末を買い替えたとき、家族や同居人が操作しなければならなくなったとき、設定が1台のスマートフォンにしかないと詰まります。導入時に、設定の控えと復旧の手順を紙かファイルで残しておくと、あとの作業がかなり減ります。

複数人のオフィスで、運用の設計まで含めて進める場合は、小規模オフィスにIoT機器を入れるときの進め方を参照してください。

機器の種類ごとに、導入の難度は大きく違う

同じ「スマート機器」でも、導入の難度は種類でかなり違います。差を作るのは性能ではなく、戻しやすさと、止まったときに業務がどれだけ影響を受けるかです。

機器の種類 設置と撤去のしやすさ 止まったときの影響 継続して発生する管理
電源系(プラグ・スイッチ) 差し込むだけで、外せば元の状態に戻る つないだ機器を手で操作できるなら影響は小さい ほとんど発生しない
照明(電球・器具の交換) 交換で戻せるが、壁スイッチとの併用で誤操作が起きやすい 消灯か点灯のまま固まると作業に直接響く 壁スイッチを切らない運用を使う人全員に伝える
センサー(温湿度・人感・開閉) 貼り付け式が多く、撤去は容易 記録が欠けるだけで、業務そのものは止まりにくい 電池の交換周期と、切れたことに気づく仕組み
施錠(スマートロック) 賃貸では原状回復と管理会社への確認が要る 入退室が止まり、締め出しが起きうる 権限の付与と回収、電池残量の把握
記録系(ネットワークカメラ) 設置は簡単だが、撮影範囲について事前の説明が要る 記録が途切れ、あとから確認できない 保存期間、閲覧できる人の範囲、働く人への周知

最初に触るなら電源系とセンサー系です。どちらも外せば元の状態に戻り、失敗の代償が小さいためです。施錠系と記録系は、機器を選ぶ前に決めることのほうが多く、選定作業としては別物になります。鍵まわりを要否から検討する場合は、小規模オフィスにスマートロックは必要かで条件を整理しています。

購入前に確認する4項目

候補が2〜3に絞れたら、次の4項目を確認します。仕様欄で分かるものと、問い合わせないと分からないものが混ざります。

対応する規格と通信方式

Wi-Fi接続の機器には2.4GHz帯にしか対応しないものがあり、5GHz帯だけで運用しているネットワークではつながりません。Bluetooth接続の機器は、操作のたびに近くにいる必要があるのか、ハブ経由で離れた場所からも操作できるのかで使い勝手が分かれます。

アプリの提供元とアカウントの扱い

機器のメーカーとアプリの提供元が別なことがあります。登録に使うメールアドレスを業務用のものにできるか、担当が替わったときに付け替えられるかまで見ておきます。

停止時の動作

通信断・停電・サービス停止のそれぞれで、機器がどの状態で固まるかを確認します。3種類まとめて聞かず、分けて聞くほうが答えが具体的になります。

電源の取り方

コンセント、電池、既存配線への結線のどれかで、制約がまったく違います。結線が要るものは、賃貸では工事の可否から確認が必要です。電池式は、交換の周期と、切れる前に気づけるかどうかが運用のしやすさを決めます。コンセントから取る機器を増やすなら、系統ごとの容量も見ておきます。配線が増えたあとの整理は仕事部屋の配線を整理する順番で扱っています。

サービス終了とアプリ提供停止をどう見積もるか

クラウド経由で動く機器は、提供が終わると機能の一部または全部が使えなくなります。どの製品がいつ終わるかは予測できませんが、終わったときの被害の大きさは買う前に見積もれます。

見る観点は3つです。

1つ目は、クラウドを経由しないと成立しない機能がどれかです。外出先からの操作、録画の保存、音声での操作は、多くの場合サービス側に依存します。逆に、宅内のネットワークだけで完結する操作が残るなら、提供が終わっても限定的に使い続けられます。

2つ目は、元の設備が残るかどうかです。後付け型は、機器を外せば元のリモコンや鍵がそのまま使えます。置き換え型は、戻すのに工事や買い直しが発生します。

3つ目は、業務の手順がその機器に依存していないかです。解錠の方法がアプリしかない、記録の確認がそのサービス上でしかできない、という状態になっていると、提供終了時に手順ごと作り直すことになります。

編集部としては、業務が止まる位置に入る機器ほど、後付け型で元の設備を残す構成を優先することを勧めます。利便性は下がりますが、提供終了と故障の両方に同じ備えが効きます。

最初に試す範囲を決めて、次にやること

最初に導入する範囲は、1か所・1種類・1アプリに限定します。複数を同時に入れると、うまくいかなかったときに原因が機器なのか設定なのか環境なのかを切り分けられません。

期間は2〜4週間を目安に取り、その間に見るのは動いたかどうかではなく、次の3つです。

  • 手を入れなかった期間に、何回止まったか。止まったことに気づけたか
  • 自分以外の人が触ったとき、説明なしで操作できたか
  • 止まったときの手動での代替が、実際にその場でできたか

3つとも問題がなければ、同じ型のまま範囲を広げます。1つでも引っかかるなら、台数を増やす前に原因を潰します。ここで広げると、同じ問題を台数分抱えることになります。

次にやることは、順に4つです。

  1. つなぎ先の一覧を書き出す。既存の設備と、半年以内に足す予定のものを必ず入れる
  2. 候補ごとに、通信断・停電・サービス停止での挙動を販売元に確認する
  3. 管理者と、その人が不在のときに触る人を決める。アカウントに使うメールアドレスもここで決める
  4. 1か所だけ導入し、期間を決めて運用する。広げるかどうかの判断は、期間の終わりまで保留する