画面と音

Web会議用イヤホンの選び方|聞こえ方より話しやすさ

Web会議の音声は、イヤホンの音質よりもマイクと口の距離・部屋の反射・回線で決まります。有線/無線/ヘッドセット/スピーカーフォンの型ごとの違いと、買い替える前に自分の声を確かめる順番を整理しました。

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SCOPE

対象
Web会議の音声品質に不満があり、機器を見直したい在宅ワーカー・経営者
到達点
自分の会議の使い方に合う型を選べ、改善すべき点が音声機器以外にあるかも判断できる状態
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会議の途中で「少し聞こえにくいです」と言われ、イヤホンを付け直したり、口元に手を当てて話したりする。その場は流れても、別の日に同じことを言われます。自分の耳には相手の声がはっきり届いているので、どこを直せばよいのか見当がつきません。

Web会議の機材選びが難しいのは、確かめたい情報が手元にないからです。試着すれば「自分にどう聞こえるか」はすぐ分かります。一方で「自分の声が相手にどう届くか」は、店頭でも通販の説明でも確認できません。会議で問題になるのは、ほとんどが後者です。

この記事では、送話側(自分の声が相手に届くまで)を中心に、型ごとの違いと、機器を買い替えても直らない原因の見分け方を扱います。

「聞こえにくい」と言われたとき、疑う場所は3つに分かれる

音声の不調は、機器・部屋・回線のどこかに原因があります。この3つは症状の出方が違うので、言われ方から当たりをつけられます。

相手からの言われ方 まず疑う場所 確かめ方 先にやること
声が小さい、遠い マイクと口の距離 自分の声を録音し、空調やキーボードの音と比べてどちらが大きいか聞く マイクを口元に近づける。PC内蔵マイクをやめる
こもる、風呂場のように響く 部屋の反射 手を1回叩き、音がすぐ止むか、尾を引くかを聞く 声の当たる面に布や本を置き、マイクを口に近づける
途切れる、単語が飛ぶ 回線か無線接続 有線接続にして同じ症状が出るか比べる 通信側の切り分け。機器の買い替えは最後
話し始めの一語が消える 会議ツール側の音声処理 一呼吸置いてから話し、症状が変わるか見る 再生音量を下げ、マイクへの回り込みを減らす
自分の声が相手に返る、反響する スピーカーとマイクの回り込み 同じ部屋に別の参加者がいないか確認する 部屋の中で機器を1台に絞る

切り分けの原則は「相手を変えても同じ指摘が出るか」です。複数の取引先との会議で同じことを言われるなら、原因は自分側にあります。特定の相手とのときだけなら、相手側の環境か、その経路の通信を疑います。

途切れや音飛びが主な症状の場合、原因は音声機器ではありません。イヤホンを買い替えても直らない部類です。切り分けの順序は仕事場のWi-Fi環境を改善する手順にまとめてあります。

相手に届く声の質は、マイクと口の距離でほぼ決まる

マイクは、声だけを選んで拾うことはできません。口から離れるほど、声そのものに対して、部屋の反射音・空調の風切り音・打鍵音の比率が上がります。マイクの性能で変えられるのは音の質感であって、この比率ではありません。

そのため、距離を詰めるほうが機器のグレードを上げるより効きます。ノートPCの内蔵マイクが不利なのは、性能というより配置の問題です。口から遠く、キーボードと同じ面にあるので打鍵の振動を拾い、排気の近くにあり、画面の角度を変えると向きも変わります。

イヤホン側のマイク位置は、おおまかに3種類あります。

  • ケーブル途中のインラインマイク:口元に近い位置まで持ち上げられますが、姿勢で位置が変わります。服に触れると擦れる音がそのまま入ります
  • 耳元に内蔵されたマイク:位置は安定するものの、口からは最も遠くなります。距離の不利を機器側の処理で埋める設計です
  • ブームマイク(口元に伸びるアーム):距離が固定され、姿勢を変えても変わりません。見た目を許容できるかが分かれ目です

会議のたびに「声が遠い」と言われているなら、最短の対処はマイクを口元に固定できる型に替えることです。逆に、指摘が「こもる」「響く」に寄っているなら、次の判断は機器ではなく部屋になります。

型ごとの違いは、音質より運用の差に出る

同じ価格帯で比べたとき、音の良し悪しよりも「毎日の会議で破綻しないか」で差がつきます。

有線イヤホン 無線イヤホン(左右分離) ヘッドセット(ブームマイク付き) スピーカーフォン
マイクと口の距離 姿勢で変わる 耳元で固定。口からは遠い 口元で固定される 机上の置き場所と、話す人の位置で変わる
通話の位置づけ 音楽再生が主で、通話は付加機能のものが多い 製品による差が大きい 通話が主目的 通話が主目的
電池切れ 起きない 会議の途中で切れることがある 無線型なら起きる 据置きなら電源を挿したままにできる
接続の手間 挿せば使える。機器の切り替えが速い スマートフォンとPCで接続先の取り合いが起きる 専用レシーバー型は接続が安定しやすい 据え付けてしまえば操作が減る
長時間での疲れ 耳の中の圧迫が出やすい 同様。片耳だけ使えば軽くできる 側圧と重量が効く。眼鏡と干渉することがある 装着物がないので疲れは出にくい
同室に人がいる場合 音漏れは小さい 音漏れは小さい 音漏れは小さい 1台に集約できるが、複数台あると回り込む
向く使い方 会議が短い。機材を増やしたくない 移動や外出が多い 1日に何本も、長い会議がある 同じ部屋に同席者がいる

型を絞る手がかりは、音の好みではなく会議の入り方です。1日の会議時間が長く、席に着いたまま話す時間が長いほど、口元にマイクが固定される型に寄せると指摘が減ります。移動しながら参加する日が多いなら、装着の速さと持ち運びが優先で、そのぶん送話品質は環境に左右されると割り切ることになります。

無線で起きる問題は、音質だけではない

無線接続の機器は、音楽を聴くときと通話するときで動作が変わるものがあります。マイクを使う状態に切り替わると、再生側の音の帯域が狭くなる方式があり、会議の間だけ相手の声がこもって聞こえることがあります。同じ機器で音楽はきれいに鳴るのに会議だけ音が悪い、という場合はこれに当たります。

接続先の取り合いも会議中に起きます。スマートフォンとPCの両方に登録してあると、着信や通知をきっかけに接続が移り、会議の音声が途切れます。会議用の機器は接続先を1台に固定しておくか、切り替え操作を覚えておくかのどちらかにしておくと、当日に慌てずに済みます。

USBに挿す専用レシーバーを使う方式は、接続が安定しやすい一方で、レシーバーを失うと本体が使えなくなります。ポートを1つ占有する点も、機器の多い机では効いてきます。

有線を1本、机に置いておく運用は地味ですが有効です。電池切れやペアリングの不調が起きたときに、会議を落とさずに切り替えられます。

部屋の反射は、機器では取り切れない

会議ツールのノイズ抑制は、空調やファンのような一定して鳴り続ける音には効きます。ところが、自分の声が壁や机で跳ね返った音は、声と同じ成分でできているため、取り除きにくい性質があります。「風呂場みたいに響く」と言われるときは、機器を替えても改善しにくい部類です。

いまの部屋がどれくらい響くかは、手を1回叩けば分かります。音がすぐ消えるなら反射は少なく、少し尾を引くなら反射が多い部屋です。

効き目の大きい順に対処すると、次のようになります。

  1. マイクを口に近づける。反射音の比率が下がるので、部屋を変えなくても改善します
  2. 声が正面から当たる面に、布・本・凹凸のあるものを置く。硬くて平らな面が減れば反射も減ります
  3. 床にラグ、窓にカーテンを足す。面積が大きいぶん効きますが、部屋の用途と相談になります
  4. どうしても響く部屋なら、会議のときだけ場所を変える

机の正面に大きな平面があると、そこも反射面になります。画面の枚数やサイズを検討している段階なら、視距離と設置スペースの決め方を在宅ワーク用モニターの選び方で扱っているので、配置を決めるときに音の跳ね返りも一緒に考えておくと、後から手戻りが減ります。

長時間の会議で効いてくるのは、装着感と電源

30分の打ち合わせでは気にならない差が、連続する会議では表面化します。耳の中を塞ぐ形状の圧迫感、頭を挟む側圧、眼鏡のつるとイヤーパッドの干渉、耳が蒸れること。どれも試着の数分では判断できません。判断材料になるのは、装着したまま何分過ごしたことがあるかという自分の実績です。

もう1つ、自分の声の聞こえ方が疲れに直結します。耳を塞いだ状態では自分の声がこもって聞こえるため、無意識に声を張ったり、逆に抑揚がなくなったりします。自分の声をイヤホン側に返す機能があれば軽減できますし、機能がなくても片耳だけ装着すれば同じ効果が得られます。会議が続く日に片耳運用へ切り替える人が多いのは、音質ではなくこの理由です。

電源については、連続通話時間の表示は使い方で変わるため、目安として見ておく程度にとどめます。会議が立て込む日に効くのは、充電しながら使えるかどうかと、会議の合間にケースへ戻す習慣が自分に定着するかどうかです。どちらも見込みが立たないなら、有線か据置きの機器を1つ持っておくほうが確実です。

複数人で1台を使うときは、集音範囲から考える

同じ部屋に同席者がいる会議では、選ぶ基準が変わります。1人用の機器を人数分使うと、スピーカーから出た音を別の端末のマイクが拾い、反響やハウリングが起きます。部屋の中では音を出す機器とマイクを1台に集約し、ほかの端末は音声を切って画面共有だけに使うのが基本形です。

スピーカーフォンを使う場合、判断の中心は集音できる範囲です。机の中央に置いても、端に座っている人の声は遠くなり、相手側には「遠い人」として届きます。人数が増えるほど部屋も広くなり、反射と距離の両方が不利になります。

会議の性質でも選択が変わります。全員が順に発言する打ち合わせなら、集音範囲の広い1台に集約するほうが自然です。1人が長く説明し、ほかは聞く側に回る会議なら、話す人だけがマイクを口元に固定する型を使い、残りは音を出さないほうが、相手にははるかに聞き取りやすくなります。

会議室に据え置く場合は、電源を挿したままにでき、PCとはケーブル1本でつながる構成にしておくと運用が楽です。使うたびにペアリングと充電残量を気にする構成は、人が入れ替わる場所では続きません。

会議中に音声操作の機器が反応する、通知音が会議に入るといった事故もこの場面で起きます。機器同士の干渉についてはスマートホーム製品を仕事場で使うときの注意点を参照してください。

次にやること

買い替えの検討に入る前に、自分の声を1回録っておくと判断が早くなります。

  1. スマートフォンの録音機能で、会議と同じ姿勢・同じ機器・同じ部屋で1分ほど話して録る
  2. 聞き返して、声以外の音(打鍵・空調・反射)がどれくらい混ざっているかを確かめる
  3. マイクの位置だけを変えて録り直す。差が大きければ、必要なのは「口元に固定できる型」で、機器のグレードではありません
  4. 位置を変えても変わらないなら、原因は部屋側です。布のある面を1つ増やして、もう一度録ります
  5. 途切れや音飛びが主症状なら、音声機器の検討はいったん止めて通信側から確かめます

そのうえで、買う前に次の4点を決めておくと、型が1つか2つに絞れます。1日の会議の合計時間(長いほど装着感と電源が効きます)、同席者の有無(いるならスピーカーフォン側)、外出先で使うか(使うなら無線と携帯性)、PC側の空きポートと他機器との接続の取り合い。

音声機器にどこまで予算を割くかは、机の上のほかの道具との兼ね合いで決まります。順番の付け方は仕事道具にお金をかける優先順位で扱っているので、複数の買い替えを抱えている場合はそちらで整理してから戻ってきてください。